【ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】自然の息吹を感じる傑作オープンワールド

謎解き

ゼルダの伝説といえば、あの謎を説いた時のSEが象徴的だろう。今作では各地に配置された祠に謎解きが用意されている。マグネキャッチやビタロックなどの道具を最大限に活かした謎解きは、「こんなこともできるのか」と驚かされるばかりである。チュートリアル程度の難易度からそこそこの歯応えのあるものまで幅広いが、難しすぎてプレイのテンポが悪くなるほどではなく、程よい範囲に収まっていると感じた。また、想定されていないであろう解法も可能な自由度の高いパズルというのも魅力の一つだ。

祠だけでなく、山の頂上など「何かありそう」と感じるところにはコログがいて、地図上では何もないところでも探索する楽しみがある。不意に「何かありそう」な場所にコログを見つけると、そういった場所を積極的に探すようになるというプレイヤー心理を利用したゲームの作りになっており、さらに、プレイヤーの期待に十分に応えてくれるだけの仕掛けが用意されている。フィールド上に楽しみを発見したプレイヤーは自発的に冒険し、新たな喜びを開拓していくという好循環が生まれる。

ジャイロセンサーを使用したアクションは、アナログなおもちゃを思い出させる。形は変わっても、遊びの根幹は共通するところがある。古めかしい遊びも取り入れて、新しいゲーム体験を創り出しているのは、驚嘆するばかりだ。

精細すぎないグラフィック

本作のグラフィックは一見すると物足りなさを感じるかもしれないが、このゲームにおける重要なポイントをしっかりと捉えたバランスの上に成り立っている。

まず第一に、Switch、Wii Uという決して高くないハード性能でオープンワールドを実現している。PCやPS4など優れたハード性能を利用したゲームとは違い、限られたグラフィック性能でゲームとしてのボリュームを維持しながら描画している。

次に、オブジェクトの精細さよりも、広大な土地を見渡した時の空気感を演出することに重点を置いている。プレイヤーは武器や果物など手に取る物の精巧さよりも、遠くの山の美しさや、雨風などの空気を感じる時間の方が圧倒的に長い。たとえ小さなオブジェクトが緻密に作られていたとしても、野山を駆け巡っていては目に留まらない。カメラを引いて見たときに、グラフィックだけでなくゲーム全体の魅力が見えてくる。プレイ体験に準拠したグラフィックの設定と言えるだろう。

そして、キャラクターの個性と演出はしっかりと押さえている。それぞれの種族が特徴的に作られているだけでなく、老若男女の個性も多彩で作り込まれている。会話の中のコミカルな仕草から、ムービーの中の切ない表情まで、表現すべき点を表現できるかが重要である。多彩なキャラクター達と、それらが作り出す世界観とストーリーをいかに魅力的に見せるかという点を重視していることが感じられる。

凝縮されたムービー

リンクが過去の記憶を取り戻すたびにムービーが入り、それらが断片的に組み合わさってストーリーが形成される。

各ムービーは印象的なシーンが集められており、それぞれのキャラクターの内面や関係性など、ストーリーの要点が端的にまとめられている。ゼルダが抱える苦悩、英傑との仲も、厄災の悲劇に繋がることを考えると、胸が締め付けられる想いがする。それぞれの前後関係は明確ではないが、おかげで見る順序が定まっていないオープンワールドの進行との相性も良い。各キャラクターの表情が豊かだったり、構図が印象的であったりと、映像の技巧も素晴らしい。

まとめ

『ブレス オブ ザ ワイルド』の名の通り、広大な自然を駆け巡り、気候を感じ、料理を食べ、野生の息吹を感じることができる。アクションや謎解きなどのシリーズを象徴する要素は進化を遂げ、BGMやグラフィックは自然を引き立てるための最適な形に作られている。ストーリーは凝縮され、繊細に描かれたキャラクターの感情に心揺さぶられるだろう。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、歴史に残るオープンワールドの傑作である。

参考

  • ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド | Nintendo Switch / Wii U | Nintendo
    https://www.nintendo.co.jp/zelda/index.html
  • 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が発売5周年。世界中のゲームファンから称賛され、2580万本の大ヒットを記録した傑作。続編の情報も待ち遠しい【今日は何の日?】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com
    https://www.famitsu.com/news/202203/03252992.html
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