【ファイナルファンタジーVIII】高い期待に応えられなかった惜しい名作【ネタバレあり】

『ファイナルファンタジーVIII』は、スクウェア(現スクウェア・エニックス)が1999年2月11日に発売したRPGである。1987年に発売された『ファイナルファンタジー』のナンバリングタイトル8作目であり、対応ハードは前作に引き続きPlayStationで、CD-ROM4枚組である。総売上は364万本に上り、Windows用の『ファイナルファンタジーVIII For PC』(2014年05月08日発売)と、iOS、Android、PS4、Switch、Xbox One、Steam用の『ファイナルファンタジーVIII Remastered』(2019年9月3日発売)として再販されている。主題歌『Eyes On Me』を採用し、のちのシリーズ作品においても主題歌が恒例となった。

ストーリー序盤

主人公のスコールは傭兵学校バラムガーデンの生徒で、ライバルのサイファーらと共に特殊部隊SeeDの試験を受ける。スコールは合格しSeeDの一員となるが、実地試験で命令を無視したサイファーは不合格。晴れてSeeDに合格したスコールは、パーティーでリノアに出会い、二人でダンスを踊る。

共にSeeDに合格したゼルセルフィと初任務に向かうと、なんと依頼主はリノアだった。依頼内容はティンバーの独立に協力すること。ティンバーはガルバディアが統治しており、ガルバディア大統領を狙うリノアたち。テレビ局で大統領と手を組んだ魔女イデアがいた。魔女は姿を消すが、その場にいたサイファーが共に消えてしまう。スコールたちはガルバディアガーデンへと向かうが、道中でラグナの夢を見る。ガーデンで受けた指令は魔女暗殺。ガルバディアの首都デリングシティで暗殺作戦に臨むが、現れた魔女の横には、魔女の騎士となったサイファーがいた。

戦闘システム

今作の戦闘システムの特徴は、ジャンクションドローである。ジャンクションとは、G.F.(ガーディアンフォース、召喚獣のようなもの)、魔法、コマンド等をプレイヤーに装備し、能力をあげていくシステムである。ジャンクションをしない状態では、キャラクターの行動は「たたかう」しか選択できず、ステータスも低いままである。魔法も仕様が大きく変わり、前作までのようなMP消費ではなく、ドローコマンドからストックした魔法を消費していく仕様になっている。また、ジャンクションした際のステータス上昇分は魔法の強さや魔法とステータスとの相性に応じて増加するほか、魔法の個数に比例して増大する。

一見システムが複雑になり選択肢が増えたように思えるが、実際のところそれほど自由度は高くない。どのステータスにどの魔法をジャンクションするかは、ある程度最適解が存在し、ジャンクションの組み合わせによって思わぬ相乗効果を生むということは期待できない。「さいきょう」を選択してから属性とステータスの付与を変更する程度である。

また、敵のレベルは戦闘に参加するキャラクターの平均レベルによって変動するため、倒せない敵にレベルを上げて挑むという作戦が機能しない。主な強化方法は強い魔法をジャンクションすることであり、敵のレベルが上がれば強い魔法がドローできるようになるのだが、結局のところ低レベルで強い魔法を入手するのが一番強い。新しい魔法を発見し、ドローする作業を経て強化されるため、強くなっていくという感覚が得られにくい。

歴代シリーズで大きなウェイトを占めていた武器や防具の選択は大幅に変更された。防具は無くなり、武器は必要なアイテムを集めて改造するという仕様に変わった。武器改造による上昇分よりジャンクションの方が影響が大きく手軽なため、優先度は低いと言える。

これまでのシステムを大幅に変更し、全体的に複雑さが増したが、最適解が突出して強く、かえってワンパターンになってしまった印象がある。既プレイであれば、どこでどの魔法が手に入るといった知識をたどりながらプレイすることができるが、新しい街で新しい武器を手に入れて強くなるというようなわかりやすい強化がなく、初見ではわかりにくいと感じてしまうだろう。前作までの知識が通用しにくいというのも、評価を下げてしまうポイントだったのではないだろうか。

グラフィックの進化とスケール感の拡大

ムービーの進化

グラフィックは前作から大幅に進化し、全体的にリアリティが増した。キャラクターの仕草や表情が精細に描かれ、ムービー中はキャラクターの心情が伝わる表現が可能になった。2Dの時代は数パターンあるグラフィックから選択する形で表現していたものが、前作では立体的に動かせるようになり、今作ではキャラクターの複雑な表情まで描けるまでに進化した。今までは記号的な表現だったものが、具体的で的確に表現できるようになったと言える。

ムービー中にキャラクターを操作することができたり、通常操作からムービーにシームレスに移行するなど、進化したグラフィックの世界の中でゲームをしていると感じさせてくれる。高精細のグラフィックをムービー内だけで完結させてしまうのではなく、それ以外の場面との繋がりも作り、ゲーム全体がムービーの美しいグラフィックによる恩恵を受けている。

今作の大きな特徴の一つが主題歌である。フェイ・ウォンによる歌、オーケストラの伴奏など、音楽の豪華さは格段に上がった。以降のシリーズ作品にも受け継がれていくが、それぞれの主題歌は各作品のイメージを形作る重要な要素となった。主題歌を含むBGMは、グラフィックと同様に技術が進歩し、ほぼ制約がなく作れるようになったといえる。

スケールの拡大

前作に比べてスケール感が非常に大きくなっていることも重要なポイントだ。バラムガーデンは広大な学園でありながら、一つの乗り物に変わる。小さな船では味わえない、巨大なクルーズ船に乗って世界を旅しているような感覚が得られる。街のマップは細かく分かれており、全体としては広く、かつ細部まで描かれている。エスタの背景のスケール感は圧倒的で、ワールドマップ上でも存在感がある。ルナティック・パンドラがエスタ上空を移動するシーンも、ガーデンが移動するのと同様に、大規模なスケールの転換を感じさせる。

ファイナルファンタジー4でも月へ行くシーンがあるが、やはりプレイステーションの3DCGで描かれる宇宙のスケール感は桁違いである。建物から街、街から国、国から大陸、そして大陸から天体へとスケールチェンジしていき、月へと到達する。そして、全ての運命を握った主人公がこの世界全体を救うという、王道の展開にしたがってゲームが進行する。このスケール感の演出も、歴代シリーズには存在していた訳だが、ハード、グラフィックの進化によって格段に存在感を増した。

カードゲーム

街中にいるキャラクターに□で話しかけると、カードゲームで遊ぶことができる。これがシンプルかつ奥深く、アイテム収集に繋がり攻略上の重要度も高いため、今作最大の特徴と言っても過言ではない。

各カードには4つの数字が書かれており、カードを場に置いた際に、上下左右に接したカードと数字の大小を比較して、置いたカードの方が数字が大きければ相手のカードを自分のものにできる。場に9枚のカードが置かれた後、自分のカードが相手より多ければ勝ちとなる。

上記の基本ルールに加え、オープン、セイムなどのルールが存在する。これがゲームに良い味付けをしており、最後まで勝敗がわからなかったり、弱いカードでも十分に戦えたりと、ゲームの幅が広がっている。ルールはプレイヤーが世界各地を巡りカードゲームをプレイすることで伝播したり廃れたりするため、単なるミニゲームにとどまらず、世界を旅してカードを集めるという遊びにもなっている。

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