単一アクションとその弊害
アクションゲームとしての目玉は、80種類以上の多彩な衣装である。衣装を入手することで能力を獲得し、アクションで行ける場所が広がり、ギミックを駆使して先へと進んでゆく。この衣装システムこそが、最大の売りであり最大の欠点である。
使用できるアクションは1種類だけで、そのアクションが複数のボタンに割り当てられている。○×△□、ABXYで行うアクションはどれも同じであり、ジャンプできる衣装を装備している場合はどれを押してもジャンプ、攻撃できる衣装の場合はどれを押しても攻撃をする。つまり、攻撃用の衣装を装備しているとジャンプができず、ジャンプするためには衣装変更しなければならない。この衣装変更が約1秒かかりゲームのテンポを損ねる上に、衣装変更連打による完全無敵を可能にしてしまっている。
所持できる衣装は3種類までであり、新しい衣装を手に入れると古いものが上書きされてしまう。このシステムを利用したアクションパズルとなっているため、「衣装がないと難しい」ではなく「衣装がないと進めない」という構造になっている。衣装はライフの役割も担っており、攻撃を受けたりステージ外に落下してしまうと身につけていた衣装を失ってしまう。衣装がない状態で攻撃を受けても、再開地点に戻されるだけでペナルティはないが、先に進むのに必要な衣装を持っていない場合は衣装を取りに戻る必要がある。通常なら行けない場所があったとしてもクリアには支障がないが、後述するバランスタチューを手に入れるためには、行ける場所には全て行くというのが基本になるため、衣装があれば行ける場所を無視して進むわけにはいかない。
単一アクションにした理由は、「子供向けのシンプルなアクションゲーム」というコンセプトから設計されたからではないかと考えられる。ジャンプや攻撃、その他アクションにバリエーションを持たせつつ、簡単な操作性を実現するために思い切って一種類にしたのだろう。しかし、少なくともジャンプとアクションの2ボタンが最低限のラインで、一種類にすることはほとんどデメリットしかない。立ち止まると弾を発射、一定時間で発動といった衣装は、ボタンを押してキャラクターを動かす楽しみを奪い、1ボタンアクションを無理矢理作ろうとしているとしか思えない。アクションゲームとしての最低限を満たしておらず、コンセプトが破綻していると言わざるを得ない。
80種類以上の衣装が可能にする多彩なアクションというのも、似通ったものが多く、新しい衣装を手に入れた時の喜びもそれほど大きくない。特に後半に出てくる衣装は、見た目を変えただけの使い回しのようなものもあった。機能がほぼ同じで片方が上位互換といったケースもあり、種類の多さが生かしきれていない。
衣装を手に入れるためには鍵を手に入れる必要があるのだが、ただの二度手間に感じた。ステージ開始直後やボス戦では鍵と衣装がセットになって配置されているため、設定上存在するだけで鍵自体にゲーム的な意義はあまりない。
操作性の悪いカメラワーク
このゲームの不満点として次に挙げられるのがカメラワークの悪さである。スティックでカメラ操作ができるが、ズームイン・アウト、視点変更ボタン等はない。カメラの角度を変えても少し歩けば戻ってしまう。ステージの構造が入り組んでいるためにカメラがオブジェクトと衝突することが多い。足場を上手く乗り移ることがアクションとしての主要な部分になるため、カメラワークの悪さにはかなりのストレスを感じる。操作性や視界の悪さから、何もないところで足を踏み外してしまうこともある。ボス戦はステージの形状が特殊であり、見上げてボスの動きを観察し、床を見て安全地帯を確認するという切り替えを求められるため特に気になった。
カメラワークに関しては技術的な問題であり、比較的解決が容易に思える。このゲームは総じて根本的な設計の欠陥が多いが、カメラワークの悪さ、処理落ちや長いロード時間など技術力の低さも問題である。
爽快感の無さ
このゲームの基本は、衣装を駆使してステージのあらゆるハードルを乗り越えるパズルゲームである。過去の名作アクションゲームにあるような、キャラクターを動かす楽しさ、ステージ上を縦横無尽に駆け巡る爽快感といった要素には重点が置かれていない。ソニックやNiGHTSなど高速で移動するキャラクターをイメージするユーザーの期待に応えられる物ではない。
ステージの構造が悪く、どの方向に進んでいるかわかりにくい。迷路というよりも、わざと見通しを悪くしているだけに過ぎない構造になっている。また、各章はアクト2から始めることもできるが、必要な衣装をアクト1で取っていないと進めないため、結局アクト1から進めることになる。パズルとしてもアクションとしても欠陥品である。
※2022年6月6日追記
プレイ時に見落としがありましたが、必要な衣装はアクト2からでも全て手に入るようです。