【ファイナルファンタジーVII】挑戦に満ちた名作RPG【ネタバレあり】

戦闘システム

前作までの戦闘システムを踏襲しつつ新たにマテリアシステムを導入し、これまでにない戦闘のカスタム性を実現した。また、各キャラクターに固有のリミット技もある。戦闘はたたかうを選んで通常攻撃をするだけ、通常攻撃が通用しない相手には魔法を使う程度という単純な戦法を取ることもでき、レベルをあげればそれでもある程度通用する。効率よく攻略していこうとなれば、敵の特性を知り、戦略を組み立て、マテリアを選ぶというように攻略を考えることになる。このように、クリアするだけなら誰でも可能だが、やり込もうと思えば奥深いという懐の深さが、幅広いプレイヤーに支持される要因と言えるだろう。

複雑さとシンプルさのバランス

ゲームを奥深くするためには、システムを複雑にして選択肢を増やすということが必要になる。そして必然的に生じてくるのが、選択肢の優劣である。実際このゲームでも選択肢の優劣は存在し、火力を出しやすいマテリア構成やキャラ構成が存在する。問題なのは、優劣の差があまりに大きく、ごく一部の選択肢以外に価値がなくなってしまうことだ。魔法攻撃が強すぎて通常攻撃をする意味がないという極端なゲームバランスだと、せっかく増やした選択肢もゲームの幅を広げるのに役立たない。また、選択肢のばらつきは少なくても、攻略の難易度が高いとクリアできる選択肢が限られてしまう。このキャラは使い物にならない、このマテリアを入れるとまともに戦えないというようにならないのは、さほど敵が強くないからだと言える。十分な正解の数が用意された中で、より良い正解を選べるというゲームの方が、プレイヤーを楽しませてくれるだろう。

ゲームの作りとして当然のことではあるが、最初は選択肢は少なく、進むにつれて増えていくというのも重要だ。マテリア解放直後に数十個のマテリアを渡して自由に組み合わせてみてほしいと言っても、ほとんどのプレイヤーが困惑してしまう。手に入ったマテリアの使い方がわかった頃に新しいものが手に入るというサイクルを通して、徐々に選択肢が広がっていく。

誰でもクリアできる難易度

ストーリーが主軸のゲームで戦闘につまづくことなく進められるというのもポイントだ。より多くの人がエンディングまでプレイでき、程よい難易度を維持するのも重要だ。エンディングを迎えられずにゲームを称賛する人はあまりいないだろうし、途中でテンポが悪くなるだけで脱落してしまう人は案外多いのではないかと思われる。ボスに何度挑んでも倒せないという状況は避けつつ、ハードルとして適切かつ程よく印象付けられる強さが求められる。

様々なマテリアの組み合わせで無数の戦略を可能にしつつ、それぞれの戦略が有効に機能するゲームバランスを保っている。ストーリーの引き立て役としての難易度に収まっているのも、ファンを増やすのに大きく貢献したのではないだろうか。

ストーリー

ファイナルファンタジーシリーズはタイトルごとに独立したストーリーが特徴で、各作品ごとに独自の世界観が展開される。今作はストーリーにおいても挑戦的な要素が含まれている。

精神世界で展開されるストーリー

当時の流行りとも言える主人公の精神世界がこのゲームでも描かれている。これは90年代後半に見られたが、95年に放送された『新世紀エヴァンゲリオン』の影響によるものと考えられる。自己同一性の不確かな主人公が、精神世界で自己の存在を確認するというテーマがあり、翌年発売の『ゼノギアス』においても、解離性同一性障害という形で描かれている。今作では、ライフストリームに飲み込まれたクラウドが、ティファと共に過去の記憶を辿るシーンがある。

真実ではなかったという意外性

ミッドガル脱出までは神羅との戦いを場当たり的に展開していき、カームの街で回想シーンが入る。ミッドガルから神羅ビルまで近視眼的にイベントを立て続けに見せてプレイヤーの関心を掴み、回想シーンを入れて視点を引き全体像を見せる。ここで特徴的なのが、主人公の視点で語られる出来事が事実とは異なるという点だ。プレイヤーは主人公と同じ視点で物語を追うため、主人公の視点を通して見たものは基本的にプレイヤーにとっては真実である。しかし、所々に違和感を残しながら回想が語られ、のちに真実が明らかになり、そこから次の展開へと繋がっていく。

しかし、どこまで正しくてどこから間違っているのかを明らかにする丁寧な描写がなければ、プレイヤーの理解が不明瞭なまま進んでしまう。これは省力という観点からすると、一つのシーンを複数回繰り返すことでテーマを強く印象付けることができる。ニブルヘイムの入口を通るシーンは何度も繰り返されており、ストーリーの重要なポイントであることが表現されている。他方で、重要なポイントであるということは覚えていても、実際にはどうだったのかというところが曖昧になる。一度クリアしたことがある人でも、もう一度プレイしてみると意外と覚えていないと感じるのではないだろうか。

改めてプレイしてみた個人的な感想としては、クラウドの過去について描写不足と感じる点が多いが、一本のゲームとしてまとめるために削られてしまうのも仕方ないといったところだ。部分的に間違っていたというのではなく幻覚に近いものを見ていたという感覚に近いため、断片を繋ぎ合わせて理解するのも難しい。王道ファンタジーに収まらない幅の広さがファイナルファンタジーシリーズの特徴ではあるが、かなり大胆な構成にしたという印象である。

ストーリーとキャラクターの相互作用

ストーリーとキャラクターの関係性として基本とも言えるが、クラウド以外の主要キャラクターがストーリーの要所に絡んでいるという点にも注目したい。バレットは神羅と戦う理由、ティファはクラウドの過去、そしてエアリスはセフィロスと戦う理由と強く関連している。キャラクターがストーリーを補完する。この求心的な構造がストーリーに軸を形成している。前作の『ファイナルファンタジー6』では、個々のキャラクターが独立したストーリーを持ち、それらが一堂に集結して動機付けを強くするという側面が強かった。今作は、プレイヤーが辿るクラウドの物語に対して、他キャラクターが多角的に補強していく形になっている。

エアリスの死

セフィロスのメテオを阻止するために、エアリスは一人で忘らるる都へと向かう。クラウド達はエアリスと再会するも、エアリスはセフィロスの剣に貫かれ命を落としてしまう。

ヒロインの死というのは他のゲームでは見られない展開であり、やりすぎではないかとも思える。キャラに思い入れのあるプレイヤーは落胆するし、そこでゲームをやめてしまうかもしれない。しかし、エアリスの死はこのゲームのテーマに繋がる不可欠なイベントなのである。

「空から来た厄災」が星と衝突し、北の大陸にクレーターを形成した。そして、ライフストリームが星の傷を癒すべく集中している。このゲームのテーマは「星の命」であり、星の命とは傷を癒す生命力である。死んだ人の命はライフストリームとなって星を廻る。ヒロインの死は単なる喪失ではなく、その想いは星の中を流れている。その世界観の中で、ヒロインの死という悲しみを乗り越える力こそが生命力であり、このゲームが伝えたかったことなのではないかと感じた。

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